隣の空き教室から誰もいなくなったところで私の口から手が離れ、自由になった。


直美が電話している間、ずっと黙って聞いていた雨宮くんがポツリとつぶやいた。


「ひどいな、大坪。柏木だけじゃなくて他のクラスメイトの悪口を言ってたなんて。しかも豊洲のこと自業自得だって……」


本当だよ。


直美の悪口はあまりにもひどかった。


『私が見えないところでクラスでの好感度上げようとしてるし、親友だけど空気読めないし』


また直美の言葉が頭の中で再生される。


ズキッと胸が痛くなって、さらに涙が出てきそうになった。


そのタイミングを見計らい、雨宮くんが再び私の頭を優しく撫でた。


「大丈夫だよ、柏木はなにも悪くない。気にしなくていい」


頭を撫でる雨宮くんの手があたたかく感じる。


それだけで癒される。


「雨宮くん、ありがとう……」


小さくつぶやかれた私の声は雨宮くんにちゃんと届いたようで、さらにニコッと微笑んだ。


頬をつたって流れる涙が止まるまで、私は雨宮くんに頭を撫でられていた。