千尋の突然の行動に驚いたのは私だけではなく、先生も同じだった。


「猪狩、お前どうしたんだ。女子のクラス代表は今さっき柏木に決まったばかりだぞ」


「今すぐに梨沙じゃなくて私にしてください! 私をクラス代表にしてくれないと困るんです! お願いします!」


かなり焦っている様子だ。


どうして自分をクラス代表として葬儀に参列させようとしてるんだろう。


私は千尋のために代わりに参列しようと思っていたのに。


疑問を抱く私を尻目に、先生がため息をついた。


「……はぁ。柏木、猪狩を女子のクラス代表にしてもいいか?」


「えっ……あっ、はい」


無意識にそう返事していた。


今が千尋を止めるチャンスだったのに、なぜ私は肯定の言葉を漏らしてしまったんだろう。


「じゃあ、よろしくお願いします」


心の中で自分を責めて返事以外言わない私をチラッと見たあと、千尋が私を引っ張って廊下へと出ていった。


腕を引っ張られたせいで「失礼しました」と言うことができず、そのままつかつかと歩く千尋のペースになんとかついていく。