「その辺にしといたら~?」
私の背後の方向にあるエレベーターの方からそんな声が聞こえた。
この声は…。
「なんすか?
俺と鈴音の問題なんで口挟まないでもらえます?」
「…直接ではないけど俺も関わってるからさ。
見過ごせないんだよね。」
喋ってはいないが、朔久くんの隣には紗奈がいる。
それだけで安心感が広がる。
「…鈴音」
朔久くんたちに気を取られているうちに、森谷くんが目の前まで迫っていた。
「い、や…。触らないで!」
私の腕を掴んできた。
振りほどこうにも、力が強くて振りほどけない。
「…俺、忠告したからね?」
朔久くんがそう言ったかと思うと、後ろのエレベーターの方から足音が聞こえてきた。
すぐ近くまで来たかと思うと…私の腕を引いて森谷くんと引き離した。
「俺のに触んな」
この香り、この声は…連夜だ。
「きゃ~!何??なんで辻部長が黒羽さんを抱きしめてるの?」
「森谷くんと黒羽さんが付き合ってるんだよね?」
「え、何?三角関係?」
「”触んな”って…かっこいい~」
「きゃ~、辻部長が~」
注目の的だったのは言うまでもない。



