「それなら、言ってくれれば駅まで迎えにいったのに…って、そうか。連絡取れないか」


「そういえばそうだね。チャットアプリ、美術部のグループあるのに、セイジいないんだもん」


「あぁ…俺、スマホじゃないから」


「え、ガラケー?」


「うん。そもそも、あんまり使わないから今どこにあるかわかんないけど」


「えぇ〜、持ってる意味…」


「…探しておくよ。幼馴染にもよく、メール返せって怒られる」


「何件溜まってるんだろうね…」


「さあ…。充電持ってるかもわからないけど。
ともかく、飲み物、ありがとう。コップ持ってくる」


「うん、ありがとう」


「あ。エリカの絵、家にしまってあるから」


「じゃあ私も行くよ」



セイジについて、家に上がらせてもらう。


相変わらず真っ暗な家で苦笑が漏れるけど、カーテンの隙間から差し込むわずかな光でも案外見えるもので、セイジの背中を見失うことはなかった。


階段がある方とは逆方向に廊下を進み、突き当たり右のドアをくぐるとリビングのような空間に出る。


掃除はしているのか埃は被っていないけど、どこか生活感はない。


机も、4人分ある椅子も、しばらく使われていないようだった。



セイジはリビングには見向きもせず、その先にあるキッチンに入っていく。


カチリ、とキッチンの電気が付いたことに、少しホッとした。