「……どう?」


「っ!」




そんな絵とは全く関係のないことを考えていると、純粋に絵のことを考えているのだろう他でもないセイジから声がかかり、私の心臓は過去最高に跳ねた。


や、やばい、普通に見惚れてた。



「あ、え、えっと……ごめん、見えないかも……」


「そっか……」



なんとか動揺を飲み込んで一歩距離を取ると、セイジも屈んでいた姿勢を直しながら、少し落胆したような声を出した。



うっ……見えなかったばかりか、自分の欲望のままに見惚れていて申し訳ない……!


絵を口実にその端正な顔をまじまじと見てしまった罪悪感が押し寄せてくる。



そんな私の心中なんてつゆ知らず、セイジは他の方法を真剣に考えているようだった。


だ、だめだ。こんなに考えてくれているんだから、私も考えなければ。


セイジに気付かれないようにそっと深呼吸を挟み、乱れた鼓動をどうにか整える。





とは言ってもなあ…………。



自分の世界でさえ、最近見方を教わった身だ。


他の人の、ましてや大天才のセイジの世界など、想像にも及ばない。


例え想像できたとしても、セイジがいつも描く生き生きとした絵を見ると、どうしてもこんな表現はきっと、私には一生かかってもできないのだろうなと思ってしまう。



上手くなくても良いと吹っ切ったつもりではあったけれど、セイジの世界に手を出すとなれば話は別だ。


セイジの精巧な世界を自分の手で壊してしまうのが、とても怖かった。