「えと…ごめん。変なつもりはなくって…。
エリカの目になら、映ってるかなって」


「映るって…マーガレットが?」


「そう。エリカの、マーガレット…」



セイジはサッと椅子に座りなおして、キャンバスの方を向いてまた筆を持つ。



まだ私の心臓はドクドクとうるさい。



…謝らなくて、良かったのにな。


私…嫌じゃなかった。


もし『変なつもり』だったとしても、多分、嫌じゃ……。





カァ、と音がしそうなくらい顔が熱くなってきて、慌てて首を振る。



ち、違う違う違う!


セイジはそんなつもりじゃなかったんだし!


セイジはただ私の世界が見たかっただけで、他意はないんだよ、うん!


ほら、今だってもう絵の具付け始めてるし!



「ち、ちゃんと映ってた?」



なんとか思考を切り替えようと、努めて明るい声を出す。



セイジが振り向かなくて良かった。


多分私今、すごい変な顔してる。


顔は絶対赤いし、まともにセイジの目を見れる気がしない。



「…うん。俺のじゃないマーガレットが、見えた」


「そっか…なら、良かった」


「でも、エリカのと一緒かは……」



わからない、と言おうとしたんだとは思うけど。


セイジは言葉を続けるのも忘れたようで、絵に没頭しだした。



そのいつも通りの姿を見て、ほうっと息を吐き出す。