「起立、礼」
放課後
向かったのは、四階だった。
この階段の、続いている先は――。
(もう、いやだ)
「宇崎」
――!?
「どこ、行くんだ」
「……先生?」
「そっちは一般生徒、立入禁止って書いてるだろ」
少し息をきらした栗原先生が、私の腕を掴む。
その手には力が込められていて。
「……痛い、です」
「ああ、すまん」
先生が、私から手を離す。
さっきまで、周りの音
なんにも聞こえなかったのに。
ざわつく教室だって、廊下だって、
あんなに静かで。別世界みたいで。
私、ひとりぼっちだったのに――。
「どうして、ここに先生がいるんですか」
煩いくらいに心臓が鳴り出した。
「出席簿、教卓に置き忘れてさ。もぬけの殻の教室に宇崎の鞄だけが残ってて。本人の姿がなかったから」
「それだけ?」
「見えたんだ。廊下の窓から、こっちに向かって歩いてるお前が」
「だからって。なんで駆けつけるんですか」
「なんでって、そりゃあ。気になったからだろ」
「それ、教師の仕事ですか」
「宇崎……?」
「私を監視することも、先生の仕事ですか」


