栗原先生って。
「じゃあ俺、行くけど。宇崎も授業頑張って」
思ったよりずっと。話しやすい。
「……消しゴム」
「ん?」
「ないんです。転がっていったみたいで」
「あー、それで探してたのか。だったら」
先生が自分の筆箱からなにかを取り出すと
「手、出して」
「?」
「ラッキーだったな。今日二個持ってた。それもまだ新しいやつ」
「え……」
「やるよ」
そういって、私の手のひらに小さな長方形の消しゴムを乗せてくる。
先生の、骨ばった大きな手が視界を捉える。
なんか。すごく、男の人って感じだ。
「JKには地味すぎるか?」
「へ」
「シンプルイズザベスト。俺の座右の銘」
「……いや、全然、地味じゃないです。かわいいです」
「かわいい?」
「いやっ……あの、」
最初、先生の大きな手がなにかを包んでいて。
手がグーからパーになった瞬間、パッと魔法みたいに小さな四角い消しゴムが現れて。
なんだろう。
マジックショーのマジシャンや、サーカスのピエロを目の前にしたような。
わくわくした、この感覚は、なんだろう。
「そういや、宇崎とこうやって話すのってなんだかんだ初めてだな」
「……!」
「俺、二年目で。まだまだ頼りないかもだけど。よろしくな」
「こ、こちらこそ」


