「悪用は。しないから」
そんな言葉信じられるわけない。
「なにかに使うの?」
「さあ」
「私を脅すため? 麻美たちへの密告?」
「だからー。悪用は、しないって」
そういうと、体操着を、きちんと着せ直してくれる。
(……?)
「恥ずかしいところ。見てごめんね?」
「…………」
そりゃあ恥ずかしかったけど。
体操服、思ったよりもめくられなくて。
見られたのはお腹と背中で
なんていうか、病院で診察されるときみたいな。
全然やらしい感じはしなかった。
悪意なんて感じなかった。
そう安心するのは、まだ危機感が足りないのかもしれない。
だけど。
「それじゃあなんのために……」
「僕に襲われると思った?」
藤ヶ谷くんは、私の疑問には答えてくれず。
代わりに質問を投げかけてきた。
改めて見ると、とても綺麗な顔をしている。
長い前髪で半分隠れている薄茶色の目は宝石みたいで。
すっと高い鼻も
シャープな顎のラインも、整っていて。
女の子がイケメンっていう意味ならわかる。
答えないでいると、「襲わないよ」と言われた。
「そっか」
「襲ってほしいなら、別だけど」
「そんなわけ、ない……!」
「はは。まだそう言える強気が残ってるなら。心は完全に死んでないみたいだね」


