「世良幹夫」


静かに今井が名前を呼ぶ。


意識を失いかけていた世良の目が、かっと見開かれ__。


口から気の抜けたような声がするが、それは返事などではなく、命の灯火(ともしび)が消えゆく音だった。


がっくりと首を項垂れ、動かなくなる。


世良幹夫は死んだ。


全く目をそらさない和久井の口角が、わずかに上がっている。


あいつは気づいていない。


自分が笑っていることに。


いじめた相手に復讐する、その目は燃えているようだった。


なぜなら__。


「さぁ、最後の1人だ。ラスボスってところか?」


今井が鼻で笑う。


和久井を虫けらのようにいじめていた、浩志ジャクソン。


1番にやり返したい相手だろう。


けれど不思議なことに、ジャクソンは拘束を解こうと身をよじることもなければ、唸ることもない。


ただジッと、今井だけを見据えている。


怒りを内にため、息を押し殺しているようにも見えた。


「とりあえず、審議にかけよう。どうせこいつは、こいつだけは【有罪】だがな」


今井がほくそ笑む。


きっと、これは今井にとっての復讐でもある。


教師としての尊厳をバスケットボールで潰したジャクソンへの、リベンジなんだ。