「それでは、次の被告にいこう。世良について」
今井が促すと、和久井が待ってましたとばかりにまくし立てる。
中央で倒れている村瀬のことなど、目に入っていないかのように。
「世良は、実は僕と仲良しだった。僕のたった1人の、友達だったんです!」
「そうなのか?」
今井が意外そうに聞き返していたが、俺たちも初耳だった。
いじめの被害者と加害者が親しかったなんて。
「本当は、最初にいじめられたのは世良だった。それを僕が助けたんです。だって、友達がいじめられたら助けるのが当たり前だから」
和久井が胸を張って、真っ青な世良を__かつての友人を睨みつける。
「そうしたら今度は僕がいじめられるようになった。よくあることさ。でも僕は平気だった。世良と一緒に戦えばいいと思っていたから。それなのに、それなのにこいつは__」
悔しそうに歯を食いしばる。
もう最後まで言わなくても、教室にいる全員が察しただろう。
「手のひらを返したように、僕をいじめ始めたんだ。唯一、信頼していた友達に裏切られた僕の気持ちは、誰にも分からない!僕は絶対にこいつを許さない!」
和久井が問答無用の【有罪】を突きつける。
今度はちゃんと手を挙げないといけない。
評決を下さないと__世良は名前を呼ばれて殺される。



