「んー‼︎んーっ!」
激しく体を揺らして、村瀬がなにかを叫んでいる。
俺たちを睨みつけ、どうやら怒っているようだ。
有罪にはできなかったが、かといって無罪にもできない。
和久井が受けた傷は、きっと計り知れないだろうから。
「そうか。それがお前たちの答えなんだな?」
「答え?」
「そうだ。お前たちは本来、全員が被告だ。クラス内にいじめがあるにも関わらず、見て見ぬフリをしていた。それは立派な加害者と同じ」
そんな言葉に、俺たちはなにも言い返すことができない。
確かに、和久井がいじめられているのに知らん顔をしていた。誰も助けなかった。理由は簡単だ。
自分じゃないから。
しょせんは他人事。下手に助けて、いじめの標的にされるくらいなら、目を閉じていればいい。
「加害者であるお前たちにできることは、公正に評決すること。少しでも反省しているのならな」
そう言うと、教壇から出てきた今井。
村瀬の前にやってくると、冷たい目で見下ろす。
後ろ手に縛られ、足も椅子にくくりつけられ、猿轡を咬まされている村瀬がどれだけ喚いても、それは言葉にならなかった。
つまり、村瀬は返事ができない。
名前を呼ばれても、返事ができないんだ__。



