【開廷】
「起立」
全員が立ち上がる。
「礼」
頭を下げる。
「着席」
椅子に座った。
しかし、俺たちの前には机がない。
教壇だけはそのままに、今井の指示によって左右に分けられたんだ。
「これより【いじめ裁判】を行う」
そう言うと、教壇にナイフを突き刺した。
裁判でいうなら『静粛に』と金槌を打ち鳴らすところ。
そう、これは裁判だ。
教壇で威張る今井は、さしずめ裁判長だ。その向かい側に、ジャクソン、世良、村瀬の加害者。
椅子に縛られ__というか、今井に脅されて俺たちがロープで縛ったのだが、スタンガンで攻撃されてまだ意識が戻らない。
その口には、ご丁寧に猿轡までしてある。
廊下側に俺たちだ。
椅子だけ並べて座っている。
これは弁護士ということなのか?ジャクソンたちの行ってきたいじめを、弁護する?
「お前たちは【陪審員】だ。ちゃんと公正に判断をしろ」
「陪審員?」
俺たちは互いの顔を見合す。
裁判長に加害者に陪審員、あとは__窓際に置いてある椅子が一つ。
「和久井進」
「はい!」
元気に返事をし、和久井が立ち上がった。
脅されて返事をした感じじゃない。生き生きとした表情で前に歩み出ると、その席に座った。
【被害者】の席に。