不意打ちだった。
全員が前の扉を睨みつけていたが、実際に開いたのは後ろの扉。
音を立てて勢いよく開いたかと思うと、今井は足早に向かってきた。
真っ直ぐ、浩志ジャクソンに向かって。
誰もが立ち上がることもできず、ただ見ているしかなかったんだ。
腰を浮かし、わずかに身を引いたジャクソンの首に【なにか】が押し付けられるのを__。
バシンっ。
弾けるような音がしたかと思うと、大きな体が波打った。
白目を剥いてジャクソンが床に倒れる。
悲鳴が上がったが、今井の耳には届いていないのか、世良幹夫のうなじにも【スタンガン】を押し込んだ。
叫ぶ間もなく、世良も崩れ落ちた。
予め決められていたみたいに、動きに淀みがない。
だから余計に俺たちは、どうすることもできなかった。
「や、やめてくれ‼︎」
自分に突きつけられたスタンガンに向かって抵抗するのは、村瀬敦也だ。
胸をひと突きすると同時に、火花が散った。
そして教壇に立つ、今井。
これ以上は、誰のことも傷つける気はないらしい。
「それでは授業を始める」
その声は、どこまでも突き抜ける。
俺はでも、聞いちゃいなかった。
今井の向こうにある黒板を見ていたんだ。
【浩志ジャクソン】【世良幹夫】【村瀬敦也】
消さずに残されていた名前。
それとあと1名。
【和久井進】という、その名前を。