「俺がぶっ殺してやる」
鼻息荒く宣言したのは、浩志ジャクソン。
その両脇には、世良幹夫(せらみきお)と村瀬敦也(むらせあつや)の手下を従えている。
「ちょっと待てよ。あいつを殺しても、完全に解決できるか__」
「俺が殺すってんだから殺すんだよ!」
今にも殴りかかってきそうなジャクソン。
今井に頭を押さえつけられていることに、怒りがおさまらないのだろう。
不意打ちを襲えば、今井を黙らせることはできるかもしれないが__。
「楠木、やるしかないだろう?このままじゃ、どんどん不利になってくぞ?」
静かに俺に進言するのは、小金沢篤(こがねざわあつし)。
確かに小金沢の言う通りだ。反撃をしないと、やられっ放し。
しかも今井は、俺たちを始末することを楽しんでいるように見える。
俺が考え込んでいると__。
「誰か、手伝って」
洋子はもう泣き止んでいた。頬に涙の跡はみえるが、その顔は怒りで赤らんでいて、真っ直ぐ俺の目を見据えている。
一つ頷き、みんなで江東奈美を隣の教室に運んだ。
ある意味、自由だ。
隣のクラスに行くことも、学校から出て行くこともできる。
名前を呼ばれてもいいのなら、だが。
俺たちは逃げられない。
【名前を呼ばれる】という檻の中から出れないんだ。
今井はそれを見越して教室から出ていった。
俺たちは囚われている。