【不意打ち成功】


休み時間だ。


次の授業まで、10分の休み時間。


しばらく俺たちは動けなかった。今井が教室から出て行ったにもかかわらず、動けなかった。


「な、奈美__?」


1番に動き出したのは、洋子だ。


教壇の下で倒れている江東奈美に駆け寄るが、すぐに泣き声が聞こえていた。


そこでようやく、俺たちの止まっていた時が動く。


廊下に飛び出すもの、泣き出す女子、喚き始める男子、抑え込まれていた感情が爆発したように教室内は一気に騒がしくなる。


「やっぱ通じない」


そう言ったのは、日直に指名された和田カレン。


他にも携帯を手に、なんとか助けを呼ぼうとしている生徒がいたが、みな一様に首を振る。


「電波妨害かもしれない」


同じく日直の諸岡(もろおか)つとむが、小難しい顔をして言った。


「てか、あいつなんなの?」


「マジふざけんなって!」


急に怒り出しているのは、篠田有里華(しのだゆりか)と矢井田ミキのギャルコンビだ。


どんどん怒りがエスカレートしていくが「逃げるなら今じゃね?」と話が落ち着き、出て行こうとする。


「待ってくれ。名前を呼ばれたらどうする?」


俺が引き止めると、2人は抱き合ったまま立ち止まった。


思い出しているんだろう、死んでいったクラスメイトを。


だが「じゃ、どーすんのよ!」と反対に食ってかかってくる2人に__。