危ない。


俺は、間一髪のところで踏みとどまった。床に膝をついたが、音は立ててはいない。


米倉聖夜は、同じサッカー部だった。


あいつがキーパーで、俺がフォワード。聖夜のセーブ率は高く、だからこそ俺は安心して相手ゴールに攻め込むことができた。


あいつのことを、信頼していたんだ。


それなのに__玄関で突っ伏していた、聖夜の死体。


その目は見開かれ、俺を見るともなく見ていた。


一瞬だけあの目を思い出し、俺の心が大きく揺れ動いたんだ。


大切なチームメイトを奪い去ったこいつを、俺は絶対に許さない。


【凛田つかさ】


凛田も死んでいた。


これまで殺されていったクラスメイトたちのためにも、こいつの授業を阻止するんだ。


乱れた呼吸を整えて、再び立ち上がる。


その背に、じりじりと近づく。


【和久井進】


あと1人。


【和田カレン】の名前が書き記されれば、今井は俺たち生徒を振り返るだろう。


それまでに仕留めないといけない。


教室の空気が、極限まで張り詰める。


【和田__】


そこまで書いた時、ぬっとジャクソンが立ち上がった。


その熊のような手が、ナイフの柄に伸びる。


同時に、俺と小金沢が飛び出した__。