【15】
意味、だと?
30から14を引いたら、16じゃないのか?
そこに意味なんてない。
だって、答えは1つなんだから__。
「江東奈美」
「はいっ」
しやくり上げるように、江東が返事をする。
こっちまで伝染しそうなくらい震えていて時折、歯がカチカチと音を立てていた。
「答えは正解だ。だから意味を答えてくれ」
「意味?」
「そうだ。この問題の意味だ。分かるだろう?」
「__分かりません」
消え入るような声で、江東が答える。
はぁーと盛大なため息をつくと、今井はなにやら黒板に書き込み始めた。
あれは__数字じゃない。
漢字だ。
黒板に向かって左上から【安達みつる】と書いてある。
その下が【鮎川沙奈江】だ。
そして次にくるのは【猪俣直樹】だった。
生徒たちの名前を、黒板いっぱいに書いている。
死んでいったもの、まだ生き残っているもの、それらを出席簿順に書いていた。一心不乱に、書き殴っている。
そして今井が【楠木雷人】と書いた時だった。
教室がはっと息をのむ。
俺たちの間に緊張が走った。
浩志ジャクソンが、音を立てずに立ち上がったからだ。
なにも気づいていないのは、担任だけ。その担任の背に向かって、ジャクソンがゆっくりと近づいていく__。