俺は、首を横に振った。


今井が死ねば助かるかもしれない。


逞しい小金沢と、馬鹿でかいジャクソンにいたっては、怒りでメラメラと燃えているだろう。


あんなヘボ教師1人、どうにでもなる。


だが__もし、そうじゃないなら?名前を呼ばれて返事をしなければ死んでしまう。その法則は分かったが、まだはっきりとしたことは何も判明していない。


今井の口を閉じてしまえばそれで助かるのか?


もう少し、様子を見る必要がある。


俺の意図を汲み取ったのか、小金沢は1つ頷いて前に向き直った。


「矢井田ミキ」


今井の執拗な矢井田責めが続いている。


「こんな簡単な問題が答えられないなら、生きてても意味ないんじゃないか?」


「えっ」


「死んだほうがいいんじゃないか?」


立場を逆転したことを、今井は完全に楽しんでいる。


やっぱり全員で叩きのめしたほうが__?


「先生‼︎」


洋子が、手を上げた。


「私が代わりに答えます」と言って、真っ直ぐに今井を見返している。


誰もが、巻き込まれないよう視線を落としているというのに。


しばらく熱を帯びた視線で、洋子を見ていた今井が薄っすら微笑んだ。


「片平は友達思いなんだな。それじゃ、代わりに答えを書いてくれ」


「__はい」


「そのかわり、間違えたら矢井田の身代わりに死ぬこと」