【30一14=??】


数学の授業が始まった。


いつもなら誰も聞いちゃいない。


ガリ勉連中だって、今井の授業などに用がないと参考書を開いているくらいだ。


私語が飛び交い、ボールが飛び交い、笑い声が絶えない、とても授業中とは思えない時間。


それが、これまでと打って変わって、全員が黒板に背を向ける今井を見つめていた。


異様な授業だ。


席は半分しか埋まっていない。


今、空いている席の生徒は、もうこの世に居ない。


ふと視線を感じると、洋子が振り返って俺を見ていた。


もう少しで俺も、死んでいったみんなと同じ運命を辿るところだったかもしれない。


今も目に浮かんでくる。


下駄箱のそばで、積み重なっていた死体。


少し前まで同じ教室で机を並べていたクラスメイトが、苦悶の表情で息絶えていたんだ。


遅かった。


返事をすれば助かったのに__。


膝をついた俺は、洋子が呼ぶ声に我に返った。


力なく、階段を登る。


そのまま学校を飛び出して助けを呼んでくることも頭を過ぎったが、なぜかそうすることは、教室に残ったみんなを見殺しにする気がして。


教室に戻った俺は、反射的に今井に飛びかかったが、洋子や小金沢に押さえつけられた。


もしあのまま殴っていれば、俺も名前を呼ばれて殺されたていたかもしれない。


返事をすれば、死は免れる。


でももし、返事ができなければ__?