【立場逆転】


浩志ジャクソンが、ずっとこちらを睨んでいる。


馬鹿みたいに大きな体と、尖った眼光、英語で罵られでもしたら大人でも震え上がるだろう。


事実、これまでの【僕】ならそうだった。


睨まれれば、俯いていたが__。


「なにか顔についているか?」


「いい気になるなよ」


此の期に及んで凄んでくる。だから僕は__。


「浩志ジャクソン」


逆に睨みつけて名指ししてやると、攻撃的だった顔が見る見るうちに萎んでいく。


そんな問題児とのやり取りを、息を飲んで見守る生徒たち。


どんどん、ジャクソンの顔も赤くなっていく。


息ができなくなっているのだろう。


真っ赤に頬を膨らませたのち、蚊の鳴くような声な声で__。


「はい」と呟く。


僕が【勝った】瞬間だ。


これで他の生徒たちも分かっただろう。


出席を取るだけじゃない。どんな時でも、名前を呼ばれれば返事をしなければいけないということが。


返事をしなければ、死ぬ。


浅く呼吸を繰り返していたジャクソンは、それでもまた睨みつけてくる。


しかし、その勢いは明らかに弱まっていた。


ざまーみろ。


散々、人をコケにしやがって。


どうせお前は、お前たちはガキだ。大人に敵いっこない。


もし僕に逆らえば、死ぬんだからな。


教師をなめるなよ。


僕は【死席簿】の表面を撫でた。