【積み重なる死体】
「北野義雄」
静かに呼ばれた名前は、最後通告のようだった。
空手部で主将をつとめる北野義雄はそれでも、呆然と立ち尽くしている。
あれだけ「返事をしろ!」と言ったのに。
「北野、返事だ!」
「えっ?」
「返事をしろって!」
「返事__?」
馬鹿みたいに、聞き返してくる。
それも仕方ないかもしれない。目の前で共に過ごした仲間が死んでいっているんだ。
ただ名前を呼ばれ、ただ返事をしないというだけで。
「死にたくなかったら返事をしろ‼︎」
俺の怒鳴り声に、北野がようやく金縛りから解けた。
「お、押忍‼︎」
体の前で両手をクロスさせ、試合が終わったように頭も下げた。
苦しむ素ぶりもない。
やっぱり間違いない。
返事をすれば、死ぬことはない。
ふと視線を感じて顔を上げると、挑むような今井と目が合った。
しばらく睨み返してから、俺はみんなに告げる。
「みんな!返事をすれば問題ない。とにかく名前を呼ばれたら返事をするんだ‼︎」
俺の言葉に対し、反応は様々だった。
頷くもの、首を傾げるもの、泣いている女子なんかは果たして耳に届いているかどうか__?
「北原麻美」