朝のSHRのチャイムが鳴った。


【出席簿】とプリントを小脇に抱え、颯爽と廊下を進む。


僕の受け持ちである柴崎(しばさき)中学3年1組の教室は、校舎3Fにあった。


「もうチャイム鳴ったぞ‼︎」


まだ教室に入っていない生徒の尻を追い立てる。


わずかに眉を吊り上げて。


ここは教師としての威厳を振りかざさなくてはならない。


逃げるように散っていく、中学生たち。


1番、複雑な年頃だ。


「走るなー!」


声を荒げつつ、自分の教室の前に着いた。


1つ深呼吸する。


いつも、この時ばかりは緊張が襲う。この扉を開けると、30名の、60個の目が一斉に輝くからだ。


「みんな、おはよう‼︎」


扉を開けると間髪入れず、日直の号令が響き渡る。


「起立!」「礼!」「着席!」


やや気だるさは伴うものの、全員が僕に向かって頭を下げ、席につく。


机や椅子が動く音がやむと、静けさが広がった。


おとなしく、教師の言葉を待つ生徒たち。


「今日はいい天気だな」と、軽い調子で言いながら、出席簿を開いた__。


「それじゃ、出席を取る。元気に返事してくれ」


1つ咳払いしたのち、出席簿順に名前を読み上げる。


「安達みつる!」