死席簿〜返事をしなければ即、死亡



まさかの今井の反撃に、言葉が出ない俺たち生徒。


1番驚いているのは、ジャクソンかもしれない。


行き場のなくなったバスケットボールを、今井は拾い上げると教壇に置いた。


「教室への私物の持ち込みは、校則で禁止されている」


そう言って丸いボールに向かって、おもむろに取り出したのは__ぶっとい刃のナイフ。アウトドアで使うような刃物を、俺たちの担任は振り下ろした。


真っ直ぐ、ジャクソンの目を見つめながら。


ボールに深く突き刺し、ゆっくりと引き裂く。


ジャクソンが肌身離さず持っていたバスケットボールは、惨めなくらいにへしゃげてしまった。


「てめぇぇえええ‼︎」


浅黒い顔を真っ赤にして怒ったジャクソンが、教壇に突進する。


慌てて飛び退き、道を開けるクラスメイトだったが、今井は顔色ひとつ変えずにナイフを引き抜くと教壇に突き刺した。


ジャクソンの足が止まる。


いつもなら、突き飛ばし、殴りつけ、仲間と袋叩きにするところだが、今日はなにかが違う。


「それじゃ、みんな席につこうか」


大きな声で、俺たちに言う。


わずかに微笑む余裕すら感じられた。


その姿はまるで、熱血教師。


俺たちは互いに顔を見合わせるが、1人、また1人と席につく。


あのジャクソンさえ、椅子を蹴り飛ばしながらも席についた。


それなのに__。