「みんな、おはよう!」
快活に教室に入ってきたのは、俺たちの担任である今井だ。
真っ直ぐに教壇に向かい、両手をついて俺たちと向き合った。
唖然としている、俺たちと。
だってそうだろう?
確かにチャイムは鳴った。1限目が始まる時間だ。
でも__。
「お前が犯人か⁉︎」
浩志ジャクソンが流暢な日本語を__といっても、日本で生まれ育っている。
見た目とは裏腹に、英語は喋れない。
ただ、威圧感ははんぱない。今もバスケットボールを弄(もてあそ)びながら、にんまりと笑っている。
気に入らなければ、今すぐにでも投げつける気だ。いや、なにもなくても投げるだろう。ボールは今井の顔面に命中し、クラス中が喝采に包まれるのはいつもの流れ。
今井の目に怯えが浮かんでいることだろう__?
「みんなにメールを送ったのは、先生で間違いない」
はっきり、力強く言った。
そびえ立つジャクソンに、目が泳ぐこともない。
そのことに腹が立ったのか。
「てめぇ、ふざけやがって!」
ジャクソンが天から振り下ろすように、ボールを放った。
至近距離から放たれた豪速球が、今井の鼻にぶつかる___瞬間、その手がボールを払う。
初めて、俺たちの担任がはたき落したんだ。



