「やめなさいよ‼︎」
森本亜希子が止めに入るが、浅黒い肌の浩志ジャクソンがひと睨みする。
俺よりも遥かに大きい。
縦だけじゃなく横にも広いハーフは、将来は力士になるらしい。その体躯を武器に、周りをねじ伏せていた。
机の上に立たされ、両手で円を描くようにゴールを演じている、和久井進(わくいすすむ)がいじめの対象だ。
ゴールをする振りをして、思い切りボールをぶつけている。
俺は止めることもせず、自分の席についた。
下手に仲裁に入れば、代わりにいじめのターゲットにされるかもしれない。
周りはそう思い、静観している奴らばかりだが俺は違う。
もし庇って、浩志ジャクソンに睨まれても跳ね返す力がある。
向こうが襲ってくるなら、戦うまでだ。
その気構えが、和久井進にはない。
ただ、されるがままやられているだけ。いじめられていると訴えてはいるようだが、まずは相手と戦う闘志がないと同じことの繰り返しだろう。俺が助けたところで意味がない。
騒がしい教室内を見回す。
全員が登校している。
みんな制服姿で、あのメールの指示通りだ。
それほど、クラスメイトの死の真相を知りたいのか。
それとも、指示に従わないと自分の命が消えると思い込んでいるのか。
どちらにしろ、3年1組は全員が揃った。



