誰も、いなくなった。


生徒たちが倒れている。


僕の大事な、生徒たちが__。


教壇に立ち、教室を見回した。


静かだ。


この世に【僕】しかいないような錯覚に陥る。


教師の僕が、今、この瞬間に頂点に立っているんだ。


たとえ誰も、この僕を見ていなくても。


「それじゃ、最後の授業を始めようか」


そう言って、出席簿を開いた。


あいうえお順に、生徒たちの名前が並んでいる。


「安達みつる!」


もちろん、安達は返事をしない。


「鮎川沙奈江!」


鮎川も死んでしまった。


「猪俣直樹!」


猪俣は教室にはいるが、返事をすることはない。


もう2度と、誰も返事をしない。


全員を、僕が殺したからだ。


【教師】というものが、いかに神聖な職だということを、知らしめるために__。


「楠木雷人!」


静かに横たわっている楠木には、最後まで手を焼かされた。


だが、僕の勝ちだ。


教師に逆らった罰なんだ。


「知念瑠璃!」


その名を呼ぶと、手が熱くなった。


知念の首を絞めた感触が、蘇ってくる。


「森本亜希子!」


僕のことを教師として接してくれたのは、森本くらいか。


「和田カレン」


最後の名前を呼び終わる。


1人を除いて__。