【スタンガンvsナイフvsスマホ】


ある時を境に、雷人の体が重くなった。


それはきっと【命】が消えた瞬間だったんだ。


私には分かっていた。


雷人と対戦することが分かった時点で、こうなることが分かっていた。


雷人はきっと、私を守るだろう。


命を投げ打ってでも、私を守る。


ずっと私より小さくて頼りなげだったのに、いつしか急に大きくなった。背丈だけじゃない、手も声も態度も、変わってしまった。


でも、私は信じていた。


雷人そのものは、なにも変わっていないのだと。


信じる気持ちが間違っていなかったことが今、分かった。


雷人が死んだ、今。


抱きしめられていた温もりが、その重みとともに消えていく。手のひらからこぼれ落ちるように、消えていった。決して取り戻すことができない、命。


どうすることもなく、重みに押し潰される。


動かない雷人を抱きしめるが、ふと、転がっているスマホが目に入った。


【片平洋子】の名を検索して、今すぐに後を追えば、雷人は怒るだろうか?許してくれるだろうか?


手を伸ばして、スマホをたぐり寄せる。


いや。


戦わなくちゃ。


雷人が私を、守ってくれたんだから。


私は、スマホを手に立ち上がった。