「片平洋子」


案の定、俺の対戦相手として洋子が名指しされた。


「はい」


消え入りそうな声だが、最後にぐっと力を入れてから洋子が俺の手を離す。


どちらかが、死ぬ。


俺と洋子の、どちらかが。


「ちなみに2人は付き合っているのか?」


へらへらと、今井が尋ねてくる。


俺たちはもちろん返事をせずに、互いに見つめあっていた。


小さい頃から、隣にいた幼馴染。


いつからか、まとわりつく洋子を邪魔くさく思って遠ざけた。


全く口をきかない時もあった。


嫌いになったわけじゃない。ただ、どんどん女性らしくなっていく洋子に戸惑っていただけ。それなのにこいつは、気さくに話しかけてくる。


俺がぶっきら棒に接するのは、洋子を意識していたからだろう。


「洋子、聞いてくれ」


「聞きたくない」


首を振って、拒絶する。


「洋子、頼むから俺の話を__」


「聞きたくない!」


耳をおさえて、うずくまった。


俺がなにを言うのか、俺がなにを思っているのか、俺がこれからどうするのか__洋子には分かっているからだ。


俺は、死ぬ。


洋子を守るためなら、この命は惜しくない。


俺はこれから、死ぬ。