【楠木雷人】vs【片平洋子】
「お前、いい加減にしろよ!」
カッとなって飛びかかろうとしたが、目の前に飛び込んでくるのは、知念の息苦しそうな表情と。
「楠木雷人」
俺の名前を呼ぶ声。
俺たちの間には北野の曲がりくねった死体。強引に視線をもぎ剥がし、今井の目とまともにぶつかる。
「__雷人?」
洋子が、俺の腕を掴んだ。
痛いくらいに強く、揺さぶる。
なかなか返事をしない、この俺の腕を__。
「そうか、争うくらいなら死ぬことを選ぶか?慈悲愛とでもいうのかな?それならそれで、手間が省けていい。対戦相手が不戦勝になるだけだ」
「対戦、相手?」
「そうだ。片平か知念のどちらかだ。楠木的にはどっちと対戦したいかなぁ?いや、どっちと対戦したくないのか?それは一目瞭然だな」
「くっ」
こいつは、なにもかも見通している。
俺が洋子とだけは戦いたくないこと。それを知った上で弄(もてあそ)んでいるんだ。
「雷人、お願い。返事をして!」
「洋子?」
「お願いだから!」
涙を流して訴える洋子を、このまま1人にしておくことはできなかった。
「はい」
たとえこの後、戦うことになったとしても。