突然、矢井田が泣き出した。


「もう、もういやっ‼︎」


緊張の糸がぷつんと切れたのか、その場にしゃがみ込む。


強気な矢井田ミキも、篠塚らがいつも周りで同調するから大きくなれただけで、今は孤独だ。しかも、自分が生き残るためには、目の前の相手に死んでもらわないといけない。


これまでの授業とはまた、責任の重さが違う。


「わたしもう、耐えられない!」


顔を上げた矢井田の目から、大粒の涙が流れていた。


悲しみに歪むその表情に、限界を超えたことが表れている。


「どうせ助かってももう、こんなの、ムリ!有里華もいない、く、口から血を吐いて、そんなの、忘れられない!一生ついてまわってくる。み、みんな死んで、助かっても、死んだと同じじゃない!」


吐き出さずにはいられない、遣る瀬ない思いが溢れていた。


今井は、生き残った1人を生き証人といった。でもそれは、裏を返せば生き地獄と同じ。


それなら。


それならいっそ?


「もうここで死んだほうがマシ!」


そう言って、声を上げて泣き出した。


静かな教室に、矢井田の切ない泣き声だけが響き渡る。


「矢井田」


優しく声を掛けながら、北野が歩み寄る。


その肩に置かれた手を、矢井田が握った。


「でも最後に、お願いがあるの」