【北野義雄】vs【矢井田ミキ】


「この中で、1人だけ助けてやる」


知念の首を絞めつけながら、今井が言った。


5人の中で、1人だけ生き残るのだと。


「そんなの、どうせまた嘘に決まってる!」


矢井田ミキが速攻で噛みつく。


給食の時間に1度、それを経験しているからだ。


俺も同感だった。


こいつは、俺たち生徒を1人残らず殺す。これまで教師を教師とも思わず、学級を崩壊させていた俺たちへの復讐なのだから、全員を始末するだろう。


その名前を呼んで__。


「いや、今度こそ本当だ。1人だけ生かしてやる」


「1人だけ__?」


「そう、運がいい矢井田が生き残るかもしれない。ここで全員が死んでも意味がないんだ。その1人にはここで今日、起こったことを胸に刻んでほしい。生き証人になってほしい」


今井の言葉に、ツバでも吹っかけてやりたい気になる。


誰が好き好んで、今日のこの惨劇を思い出すんだ?


俺なら一刻も早く忘れたい。


こいつをぶちのめして、記憶から抹消したい。


「でも、どうやって決める?」


「北野、なかなか良い質問だ。先生が決めてもいいが、それは不公平だろう。5人で競い合って、勝ち残ったものを勝者としよう。トーナメントだ」


「トーナメント?」


「そうだ。まずは__北野義雄!」


「__はい」