もう、誰も僕をバカにしない。


「金玉」と笑い者にしたり「苗字が2つある」と鼻で笑われることもない__。


まただ。


また、意識が過去に飛んでいた。


名前を小馬鹿にされた、学生時代に。


「許さない」


現実では、楠木雷人が目に怒りの炎を宿らせている。


それなのに、過去がフラッシュバックしてくるのはどうしてか?


強く瞬きをして、現実に__そしてこれからの未来に焦点を合わせる。


まだ終わっちゃいない。


完璧な教師になるには、まずは生徒を支配下に置かなくてはならない。


残った生徒は5人。


楠木雷人、片平洋子、矢井田ミキ、北野義雄、そして僕の腕の中でしくしく泣いている、知念瑠璃。


こいつらが絶大の信頼を置いていた、小金沢篤が死んだ今、命に危険が迫っていることを感じているはずだ。


それなのに1人だけ、生徒の目じゃないやつがいる。


「俺はお前を許さない」


「それが、先生に対する口のききかたか?」


「お前は先生なんかじゃない」


楠木の言葉は、宣戦布告にも近かった。


まだ、こいつを教育する必要がある。


他のやつらはいい。


こいつだけは、徹底的にわからせてやる。


教師と生徒、どちらが偉大なのかを。