【苗字が2つ】


【今井玉置】


僕が生まれる時、男の子か女の子か分からなかったらしい。


そこで両親は【環】(たまき)という名前を考えた。


どちらにつけても不自然ではない、名前。


しかし、いざ男の子が生まれると、父親が【玉置】という字に変更をした。少しでも男らしくと思ったらしい。


だが、同じ苗字の歌手がいたことから、僕はすぐにからかわれるようになった。


「やーい、金玉!」


同級生にバカにされる日々。


名前はまだいい。小学生の健全な反応だったかもしれない。


でも僕が参ったのは__。


「今井くんって、玉置って名前なんだ。なんだか苗字が2つあるみたいね」


それはからかうでもなく、とても冷静に。


【今井玉置】


【いまいたまき】


我ながら変な名前だと思った。


改名できるなら、変えたいとずっと思っていた。


けれど逆に、個性になるんじゃないか?


しかも生徒たちの印象に残りやすい。


【今井玉置】


「先生の名前は、まるで苗字が2つあるような」


そう自己紹介をしようか?


教師を志す頃、そんなことを考えていた。


実際は、そう話しだす前にバスケットボールが顔面を直撃したのだが__。


僕は、その時の痛みを思い出して我に返った。


楠木雷人が、僕を睨んでいる。