全員の視線が、和田カレンに集まった。
水を飲んだカレンは、口の中を濯いで床に吐き捨てる。
そんな汚いことを、しそうにない生徒だったが。
顔が真っ赤なのは、怒りだろう。
身動きを奪われて、毒を押し込まれて殺されそうになったんだ。
「なに生意気な口きいてんの?もっと押し込まれたい?ねぇ、先生。残りのパンも全部、あいつに食べてもらってもいいんでしょ?」
篠塚の質問に、頷いて答えた今井。
「ほら。ミキのパンも食べてもらおうよ。あたしが手伝ってあげるからさ。だってあたしたち、マブダチじゃん」
悪びれるでもなく言い、唖然としている矢井田の腕を取る。
しかし今、矢井田は両天秤にかけている。
篠塚か、カレンか。
どっちと組んだほうが、自分が生き残るのか脳がフル活動しているように見えた。
「ふざけるんじゃないわよ!」
カレンが、ペットボトルを叩きつけて飛びかかる。
まさか向かってくるとは思わなかったのか、篠塚が下に組み敷かれ、その口にカレンがパンを押しつける。
「ミ、ミキ、た、助けて!友達でしょ!」
体格では圧倒的に篠塚が有利だが、追い詰められたカレンの力は想像以上だ。
ぐりぐりとパンが口に押し込まれようとしている。
「ちょっと、とっとと助けなさいよ!早くしろよ!」
命令口調に呪縛が解けた矢井田も、襲いかかった。
篠塚有里華に。



