死席簿〜返事をしなければ即、死亡



「みんな、おはよう」


翌日、3年1組の教室は静寂に包まれていた。


誰もが口を閉ざし教壇を__僕を見ている。見す見す生徒を死なせてしまった、役立たずの担任を。


安達みつるの席を見やる。


確かにクラス1の不良であり、生徒たちを牛耳っていたが、その安達が居ないだけでこうも静かになるものだろうか?


それに、僕に向けられている眼差しが、鋭い。


「みんな、聞いてほしい。大切なクラスの仲間が、残念な結果になってしまった。ただ、彼の分も精一杯生きていこう、きっと安達もそれを__」


__望んでいる、と口にできなかったのは、またバスケットボールが飛んできたからだ。


だがボールは、顔面ではなく黒板にぶち当たった。


浩志ジャクソンが、山のように立ち上がって、僕を睨みつけている。


いや、全部の目が、無言で僕を非難していた。


「みんな、みんなの気持ちはよく分かる。でも、普段通りにいこう」


重苦しい沈黙を振り払うように、出席簿を開く。


【安達みつる】は、もう居ない。


「あ、鮎川沙奈江」


「信じらんない。こんな時に出席とるとか、あり得ないですけど!」


ばんっと机を叩いて、中央の鮎川が立ち上がる。


「みつるが死んだっていうのに、なに呑気に出席とか。あたしは絶対に返事しない。絶対にっ!」


そこまで言うと、鮎川沙奈江はそのまま後ろにひっくり返った。