恫喝されてもなお、諸岡が投票用紙に書かれた名前を読み上げることはない。


見兼ねた今井が、諸岡の手から紙を引ったくる。


さっと、その顔色が変わった。


「誰だ?これを書いたのは」


と、用紙をこちらがわに突き出す。


そこには【クソ教師】と書かれてあった。


「教室内の生きてる人間なら、誰でもいいんじゃないのか?」


「そうか、楠木。これはお前か?こんなふざけたことを思いつくのは、お前くらいだからな」


ふんっと鼻で笑い、次の票を確認するよう諸岡に指示を出す。


俺は心の中で笑った。


なぜなら、1票目を書いたのは俺じゃないから。


その証拠に、開票した諸岡が完全にフリーズしていた。


「誰だ?誰なんだ!まさか__?」


再び奪い取ると、今井が顔を赤らめて名前を掲げた。


【先生】と大きく書いてある。


これも俺じゃない。


俺は【うんこ担任】と書いた。


1枚目は小金沢で、2枚目が洋子だ。


やっぱりこの2人には俺の思いが通じている。投票用紙には【今井】と書けばいい。そうすれば、俺たちの手で生贄を決めるなんて残酷なことは避けられる。


次の一手を今井が考える間に、俺たちが仕掛けることもできる。


投票作戦で、隙を作るんだ。


全員が俺の考えを汲み取ってくれることを、祈るのみ__。