【生贄】
「それじゃ、再投票しよう。今度はこの教室内にいるやつにしてくれ。なお、死人は無効とする」
何事もなかったように、投票用紙を配る今井。
「書かないのなら、書くまで投票を続けるだけだからな」
その説明は、俺に向けてのものだろう。
今にもペンが折れそうなくらい力を込めていた。
このペンと同じように、こいつのこともへし折ってやりたい!
水口は、俺のせいで死んだも同然だ。
やっぱり学校の外に逃がすべきだった。いや、それでも水口が居ないことに気づいた【協力者】が、今現在の苗字が桂木だと伝えていたかもしれない。
どの道、水口は助からなかった。
それも違う。そもそも、教室を出て行かせたのが間違いだったんだ。やっぱり俺が代わりに行けばよかった__。
「それじゃ、集めてくれ」
日直の諸岡つとむが、投票用紙を回収していく。
同じく日直であり書記でもある和田カレンが、今井に指示されて【正】の文字を消した。
「なにをしてる?消し足りないだろう」
「えっ?」と振り返った和田は、やがて【水口智花】の名前を消した。
「それじゃ、開票してくれ」
係の諸岡が、1枚の紙を取り上げて広げる。
眉がぴくりと動いた。
「なんだ?誰だ?」
「いやそれは__」
「はっきりしろ‼︎名前を呼ばれたいのか!」