桂木、智花?


これって_?


「どう、して?どうしてなの⁉︎」


スピーカーから聞こえてくる水口の声が、悲しみに溢れてた。


いや、水口じゃない。


桂木だ。


新しい苗字は、桂木。


そのことを、今井の協力者が伝えてきた。


そう、今井に向かって__。


「まずい‼︎」


だが俺が飛びかかるより早く、今井の口が開く。


「か・つ・ら・ぎ・と・も・か」


「桂木智花‼︎」


その声は、教室の中からスピーカーへ。そしてその向こうの放送室にまで突き刺さるようで__。


「がっ‼︎」


苦しげなうめき声が聞こえてくる。


水口だ。


「へ、返事だ‼︎返事をしろ‼︎」


聞こえるはずのないスピーカーに向かって叫ぶが、唐突に訪れた胸を突き上げる痛みに声が出ないんだ。


椅子をなぎ倒して、誰かが崩れ落ちた。


がっ、ごっ、げっ。


言葉にならない濁音だけが、教室に届いてくる。


「み、水口‼︎」


あえて明るく話す、水口智花の笑顔が浮かんでは消えていく__。


なにも、聞こえなくなった。


ぷつり。


放送が途切れた。


それは、水口の命が途切れた音でもあった。