「水口智花水口智花水口智花水口智花水口智花」
呪文のように繰り返す今井は、ほくそ笑んだ。
水口智花だと思い込んでいた生徒が、実は死んだ江東奈美で、知らないことろで入れ替わっていた。
それじゃ、水口はどこに?
急に音がしなくなったスピーカーの向こう側に行ったことは容易に想像がつくだろう。
でも、名前を呼べばいい。たとえ放送室にたどり着いたとして、名前さえ呼んでしまえば__。
「残念だったな。どれだけ名前を呼んでも、水口は死なない」
俺は、クソ教師にそう言ってやった。
名前のアナウンスが途切れたのがその証拠。飛び道具を潰したのなら、あとは本体を叩きのめすのみ。
俺はゆっくり立ち上がる。
「み、水口(みずぐち)智花‼︎」
「だから、無駄なんだよ」
「み、みなくち智花‼︎」
読み方が間違っていると思い込んだ今井が、ありとあらゆる呼び方を叫ぶ。
それでも放送室からはなにも聞こえてこない。
そもそも【水口】じゃなくなったのだから、今井がその名を呼ぶことはないんだ。
小金沢も洋子も、みんなが立ち上がる。
今井への包囲網を狭めていく。
こいつも潰して、すべてを終わらせる。
飛びかかろうと体に力を入れた時__。
ざざ、じーっ、ざっ。
スピーカーから、割れた音が聞こえてきた。



