2階の職員室を出て、ゆっくり廊下を進む。


静かだ。


まるで、学校ごと自分のものになった気分。学校そのものを支配している気持ちになる。


だが、慎重に階段を登った。


【あいつら】が襲ってくるかもしれない。


ナイフを握りしめる手に力が入る。


生徒たちが反撃に出てくるのは、想定内だ。名前を呼んだとしても、返事さえすれば死ぬことはない。


それはつまり、名前を呼ばせなければいい。


そのことに、いくら馬鹿な生徒でも気づくだろう。


だから、予防策は取ってあった。


あいつらが飛びかかってくることは想定内だ。


生徒の顔を見なくてもいい。放送室からのアナウンスで名前を呼んでも、効果は変わらない。今日ここに来るまでに【いくつも】試してるんだ。


抜かりはない。


この【死席簿】がある限り、この僕が指導者。


最高の教師となる。


もしそれを邪魔するなら、容赦なく名前を呼んで息の根を止めるだけ。


残った生徒たちにも、そのことを思い知らせてやる。


僕は3年2組の教室の扉を開けた。


生徒たちが、おとなしく席についている。


さすがに、この状況下で逆らおうという間抜けなヤツはいないか。後ろのほうには、誰か分からない女生徒の死体が転がっている。


「日直」


そう声をかけると「起立」「礼」「着席」と滞りなく進む。


ようやく、従順する生徒たちを眩しい思いで見つめる。


「それじゃ、授業を始めよう」