名前を呼びたい。


返事がかえってこなくても、ちゃんと出席を取りたかった。


だって__教師だから。


「安達みつる」


「だからさー‼︎」


間髪入れず、出席番号1番の安達みつるが机を蹴り上げる。


返事ではなく、抗議だ。


「俺の名前を呼ぶなって言ってんだろうが‼︎」


机をかき分けて、教壇に向かってくる。


クラス1血の気の多い安達みつるは、殴りかからんばかりの勢いで__。


「今度、1回でも俺の名前っ、な、なまっ__な!」


急に立ち止まると、喉をおさえる。


「がっ、が!がぁああ‼︎」


側の机に倒れこみ、悲鳴が上がる。


喉を引っかいて、目を飛び出さんばかりに見開くと、その顔色が瞬く間に紫色になっていく。


周りの生徒も、さすがに様子がおかしいことを察し、席を立って遠巻きに眺めていた。


「ごっ‼︎」


椅子を蹴散らしてのたうち回る安達みつるは、急に倒れて動かなくなった__。


教室が静まり返る。


床に倒れた安達の周りに、自然と輪ができていた。


誰1人、口を開かない。


僕は、輪の中に足を踏み入れる。


安達みつるが、口から泡をふいていた。