死席簿〜返事をしなければ即、死亡



「はぁー」


深いため息をつく。


登校拒否になる生徒の気持ちが、良く分かるというもの。


翌朝、校舎が見えると胃が痛くなったが、ここで逃げてはいけないと、自分に鞭打って学校にやってきた。


職員室に入ると、いくつもの白い目を向けられたが構うものか。


真新しい出席簿を手に、3年1組の教室に向かう。


扉の前で、しばらく佇む。


そうだ、生徒たちはまだ子供だ。


大人になりたいが、なりきれない子供なんだ。


真っ正面からぶつかればきっと、分かり合える日がくるはず。


同じ人間同士なんだから。


僕は扉を開ける__。


水が、頭から降ってきた。


全身水浸しになった瞬間、教室がどっと湧いた。


「落武者みたいじゃね?」


女子たちの悲鳴じみた声。


手を叩いて喜ぶもの、大口を開けて笑うもの、ハイタッチをして成功を分かち合うもの、クラスはまさに一体となる。


教師の僕を馬鹿にして__。


濡れたまま教壇に向かうが、日直はなにも言わない。


スーツからなにから、びしょ濡れだ。


今、涙を流したって分かりはしないだろう。


このまま教室を飛び出したかったが、僕はそうしなかった。


なぜか水を弾いて濡れていない出席簿を開く。


「出席を取ります」