「ねえ、誰と来たの?」

「何が?」

「何がってこのレストランだよ。特別な人と来たって言ったよね?私の知ってる人?」


「・・・・・ああ、よく知ってる人。」

そう言われたけど、言いたくはないと伝わった。

知ってる人・・・誰?
当然会社の人だろうけど、思い当たるのは二人くらい。
でも、来た?あのどちらかと?

それとも自分から言って、実らずに悲しい思い出があるレストランで、だから最近は特別使いをやめていたという、そうなこともあるかも。

誰だろう?

分からない。皆でそんな話になってもこいつは絶対相手のことは言わない主義なんだ。
だから誰が知ってるのかも分からない。
もしかして誰も知らないかも。
先輩かな?先輩だと私が知ってる人は限られる。

なかなかの秘密主義で上手に隠してるらしいことは分かった。
隠したいらしいとも分かった。

年上の彼女は隠したい?

社内じゃ相手に限らず隠したいか。


ずっと前に偶然ちらりと見たことがある。
ただ、全然相手のことは誰だか、知らない人だった。
確かに年上だったと思うかなってくらい。

すぐに見えなくなったし、本当に匠だったのかも自信はなかったくらいだった。
ただ、次の日に出かけたところを聞いたら、あの場で見かけたのもあり得ると思って、やっぱりあれはそうだったのかなって思っただけ。