俺から離れようとする燐の背中に手を回した。


「へ?」

「気の抜けた声だしてんじゃねえよ」


(やっぱり小せえな)


肩幅も狭ければ、腰回りも細い。


「なあ。このところは、しっかり食ってんだろ? それでも体重増えねーってことは、体質なのか」


返事がない。


ま、まさか。

俺の行動にドン引きしてんじゃねーだろうな。


「十秒経過」


燐の身体を引き離した、そのとき。


燐の顔が赤くなっていた。


「いや。そんな照れんなって」

「……なんで」

「お前が頼んできたから」

「いいの?」

「いいもなにも。リクエストに答えてみた」

「これ以上。愁の、こと」


言葉を呑み込み、怒ったような表情を浮かべる燐。


途中で言うのやめんなよ。


言われても困りそうだが。


(あー……、クソかわいい)


「次はボクがキミをあっと驚かせるから。覚えててよ?」

「へいへい」

「勝ち逃げされた気分」


ムキになる燐を見て感じた。


この勝負に、終わりなんてなければいいのに。