家に帰ると、優吾(ユウゴ)がもの言いたげな目で俺を見てきた。


「お、おかえりなさい。兄さん」


いつもビクビクして他人の顔色ばかり伺っている弟。


悪いが優吾。


――俺は、オマエとは違う。


「いつも言っているだろう。言いたいことがあるならハッキリ言えと」


お前のように“敷かれたレール”など進むものか。

絶対に。


「……どこに、行ってたの」


気弱な優吾が自らの意志で俺に探りを入れてくるなんて考えられない。


おおかた、あの女から頼まれたのだろう。

『宗吾から事情を聞き出しなさい』とでも。


「お前には関係がない」

「母さん心配してたよ。テスト期間中なのに遅いから」


こうなると、なにかアリバイが必要だな。


「女から勉強に誘われてな」

「女の子……」

「もちろん勉強なんてせずに抱き合ってたよ。お前から上手く言い訳しておいてくれ」