湯船につかりながら、思い出すのは

蛇のような目で睨んできた宗吾さんの顔ではなく


――雨に濡れた幻さんの横顔だった。


口元から血が流れていた。


「どこが青い血、ですか」


真っ赤な鮮血。


喧嘩、強いんですよね。


どうして抵抗せずに

サトルさんのパンチ受けたんですか。


『心配いらない。あのひとが本気で俺を殴っていたなら、この程度の傷じゃすまない。夕烏のことなら変わらず面倒みてくれるさ。憎まれているのは俺だけだ。なるべく顔を合わさないようにする。逃げも隠れもしないと、そう意思表示がしたかった』


なんでって、聞けなかった。

サトルさんはどうして幻さんを憎むの?


幻さんが、なにかを抱えていることが辛い。


【さすが、黒梦の姫。幻の女だ】


ねえ、燐さん。

わたし、幻さんの彼女なのに。


幻さんのこと、全然わかってあげられていないよ。