倒れたやつはケガを負っていたようだが、致命傷を与えられたヤツはいないんじゃないだろうか。
それこそ木良がとりそうなのは、薬で軽く眠らせてしまう方法だ。
「そこら中に散らばった血痕に見えたのは、血糊か。あんな暗がりでのことだ。ミノル本人にそこが“危険”で、液体は“灯油”だと思い込ませるのは、そう難しくはなく。そうだな。ある程度の恐怖を、お前はあらかじめ植え付けていた」
「はあ。お手上げだよ、幻。どうしてわかったの? 現場検証なんてする時間なかったと思うけど」
「お前は、たとえ相手を死に至らせたいと思っても。その手は汚さないだろう?」
「さすが幻。僕のこと、よくわかってる。それでも僕の小芝居に付き合ってくれたんだ?」
「すまなかった」