総長さんが甘やかしてくる③



「ふーん。ここが、幻の行きそうな場所なんだ?」


車が止まったのは、廃工場前の車道だった。


今は使われている気配のないさびれた場所だ。

深夜帯に入ったせいなのもあるだろうが、近辺は誰もウロついていない。


「少なくとも。木良は、この中にいる」

「とか言ってさー。ボクらが降りた瞬間、袋叩きにされないホショウないよね」


たしかに。


これが羅刹の罠だという可能性は、ゼロではない。

燐の言葉はカスミを煽っているようで、いち黒梦のメンバーとして状況を冷静に判断したといえる。


黒梦と羅刹が手を組むなんて前代未聞。


「まあ。羅刹のお姫様を人質にとっておけば相手も下手な動きには出ないだろうけど」


それでも
俺はカスミを信じてここに来た。


怖気づいている暇もない。


「手荒なことはするな。様子を見てくる」


車から、一人で降りると――


「カスミ」


建物の影からサングラスの男が現れた。