燐の視線が、カスミを捉える。
笑っていやがるが
獲物を狩ろうとでも考えていそうな眼だ。
頼むからヤバいことすんなよ……?
「狭苦しいところで、ごめんねー?」
オイ燐。
うちの車なんだと思ってやがる。
金輪際、使わせてやんねえぞ?
「別に」
と、カスミ。
愛想もクソもねえな。
挑発に乗るなとは言っておいたが
挑発するなとも言っておくべきだった。
…………しかし
敵チームの車に乗り込んだ割には、妙に落ち着いている。
きっと今カスミの頭の中には
幻と木良のことしか、ないのだろう。
「ボクと愁に挟まれた気分は、どうだい?」
「くだらないこと聞くな、燐。さっそくだが。目的地を運転手に伝えてくれ」
俺の言葉に、カスミが携帯を取り出し画面を運転手に見せる。
「あれれー。カスミちゃんってば。愁の命令なら、すんなり聞いちゃう感じ? ボクの見てないところで、なにがあったの? ひょっとして――」
「なんもねえよ。黙ってろ」
「あやしー」
出発すると、車内は沈黙に包まれた。
てっきり燐がこの場の空気を冷やすようなことをまた言い出すのではないかという懸念があったが、黙っている。
逆に不気味だ。


